住宅関連ニュース(住宅ローン金利比較から引用)2014年7月31日<アゴラ>

<編集部からのコメント>

記者も含めてではありますが、素人である消費者が主体的にお得な住宅ローンを選ぶのはそれほど簡単ではありません。と言うのも、住宅ローン選びに「正解」はないからですね。

もちろん結果的には金利が最も安かった住宅ローンというのは判明しますが、それは完済したタイミングで振り返って分かることであって、住宅ローン選びをしている最中はもちろん、返済している最中でも本当にその住宅ローンが最もお得なのかどうかは分かりません。

そのように住宅ローン選びに不確実性が残る=正解がない理由は大きく2つあって、1つ目はもちろん「今後の金利動向は誰にも分からないから」という点ですね。これから金利が上昇するのであればもちろん、固定金利の方が「勝ち」やすくなってきますが、

・いつ金利が上昇するのか
・どれくらい金利が上昇するのか
・金利上昇期間はどれくらいで終わるのか

によってどういう金利タイプがお得なのかは変わってきます。仮に金利が上昇するとしても大したことはなかったり、上昇期間が4~5年で終わったりするならむしろ「変動金利の方がトク」ということもあり得るでしょうしね。

ということで金利見通しに正解が用意されていない以上、金利観と安心感、それに実際に許容できる毎月の返済額から、現実的な金利タイプを選択することになりますが、そもそも一般的な消費者であれば、失礼ながら金利観など持ち合わせていないのが普通だと思いますので簡単な選択ではありませんね。

次に、住宅ローン選びに不確実性が残る理由の2つ目としては「安心感に対する評価は人それぞれ」という点です。確かに固定金利を選べば金利が変わらないという安心感を得られることができますが、同時に毎月の返済額が1万円単位で上昇していくことになります。

こうした安心感への評価=いくら払ってよいかというのはまさに人それぞれですから、これまた正解はありません。月+2万円返済額が増えても全期間固定がいいという人もいれば、それはもったいないので安心感はいらないから変動金利でいい、という人もおられると思います。

金利タイプにおいてもそうですが、たとえば疾病保障をつけるかどうか、というのも正解はありませんね。生命保険・ガン保険が十分あるので不要という方もおられるかもしれません。

というわけでなかなか悩ましい住宅ローン選びですが、さらに悩ましくさせているのが相談できる相手がいない、ということですね。

日本においては家族の間でもお金の話はタブーですし、一方、第3者として相談に乗ってくれる人がいるかと言えばあまり一般的ではありません。

とすると勢い、銀行や不動産会社に相談することになりますが、当然、彼らも営利目的ですので自社に有利となるアドバイスしかくれません。やはり最後は自力で情報収集して自己責任で決断するしかない、ということですね。

それはそれで「あるべき姿」のような気もしますが、あえて中立的な相談相手を挙げるとすればファイナンシャルプランナーということになります。

しかしこのファイナンシャルプランナーのアドバイスにも一定のバイアスがかかっていて一筋縄でいかないのが難しいところです。そんなわけで今回はファイナンシャルプランナーが同じファイナンシャルプランナーの発言を批判している上記コラムから、その内容を批評していきたいと思います。批判を批評するわけですからちょっとややこしいですが・・・。

それはともかくとしてまず1つ目は、 「FPは10年固定をお勧めするのがセオリー」というコメントに対して筆者の方は以下のように批判しています。

・自分もFPで特に住宅購入に関するアドバイスを多数提供しているが、10年固定をお勧めした事は過去に一度も無い。FPは10年固定を勧めるのがセオリーというのも始めて聞いたので、一体どういう情報に基づいているのか、まったくもって不明だ。

いかがでしょう?記者も統計データを取ったことがありませんので一概には言えませんが、少なくも「ファイナンシャルプランナーは固定金利をお勧めするのがセオリー」であるのは間違いないと思います。

通常は「全期間固定」を勧めているファイナンシャルプランナーが多いとは思いますが、現実的には20年以上金利低下が続いているわけで、結果的にはバブル崩壊以降、固定金利で住宅ローンを借りた方は、変動金利で借りた場合と比較して、少なくとも支払い利息の面では「損してきた」「負けてきた」のは厳然たる事実です。

そうした中で多少、妥協=現実を受け入れて、10年固定金利を勧めるファイナンシャルプランナーが増えてきていてもおかしくありません。その点では正直、記者は 「FPは10年固定をお勧めするのがセオリー」というコメントにあまり違和感を感じません。

2つ目の批判ポイントは、もう説明してしまいましたが、「固定金利で借りてきた人は、結果的に振り返ってみれば損をしてきた」と言う点です。以下のように批判しています。

・この指摘もより正確に考えれば間違いだ。固定金利で借りた人は今後も金利は変わらない。当然の事ながら変動金利で借りた人は今後も金利変動リスクを背負う。住宅ローンは何十年も続くので、当初数年間の金利が低かったからといって変動金利が正解という事は無い。

いかがでしょう?確かに低金利状態が4~5年、あるいは5~10年という期間なのであれば、変動金利タイプを選んだ場合、「今後も金利変動リスクを背負う」から、固定金利で借りた人が結果的に損をしたと確定しているわけではないということができます。

しかし実際には上記の通り、金利低下局面、つまり「変動金利優位」な状態が20年以上続いています。つまり、金利低下が始まったタイミングで住宅ローンを借りた方の多くはすでに完済したか、元本が大きく減っていて、仮にこれから金利が上昇したとしてもほとんど影響を受けません。

と言うことは現実問題として、金利変動リスクが全く顕在化しないまま「逃げ切った」変動金利ユーザーが次々と現れているわけで、そう考えてみると元の「固定金利で借りてきた人は、結果的に振り返ってみれば損をしてきた」というコメントは間違いではないと感じます。

3つ目の批判ポイントは「日本国内の金利が当面、数年といったレベルで上がることが考えにくい」と言うコメントで、以下のように批判しています。

・金利は株価と同じで、予想出来ないと考えるのが普通だ。(中略)現在の日本は多額の借金が積み上がっていることは今更説明するまでもない。そしてそれが、為替や金利、物価水準に今後は大きく影響を与える可能性は十分ある。したがって、物価や金利が先行きがどうなるかは全く分からない。

いかがでしょう?「金利は予想できない」と考えること自体は全くもって正しいですね。ただ一方で、繰り返しになりますが20年近く低金利が続いているという現状や、大規模な金融緩和が実施されている点を踏まえれば、「数年といったレベルで上がることは考えにくい」と言ってもさほど違和感ありません。

むしろ一般的なFPは「これから景気が回復するので金利も上昇するよ」と不安を煽ることが多いので、逆に「金利が上がることは考えにくい」と言われるとかえって誠実な印象すら受けてしまいます。そんなわけで筆者の方には申し訳ないのですが、これもやはり元のファイナンシャルプランナーの肩を持ちたくなってしまいます。

4つ目の批判ポイントは「まずはちょっと変動金利を勧めたい」というコメントに対してで、以下のように批判しています。

・ファイナンシャルプランナーは相手に合わせたアドバイスをするのが本来の姿だ。金利変動リスクを取れるのなら変動金利でもいいだろうし、リスクが取れないのであれば固定金利を選んだほうがいい。どちらか一方が万人にお勧め出来る、という事はない。

こちらも全くの「正論」なのですが、1つ目や3つ目のポイントと同様に、一般的にはファイナンシャルプランナーはさしたる合理的な根拠もなく固定金利を勧めることが多く、記者自身はそうした安直な考え方には賛同しかねる立場ですので、あえてフィナンシャルプランナーの「王道」ではない変動金利を勧めたということであれば(記者自身は残念ながら件の放送を見ておりませんが)、かえって清清しい気がします。

ということで、そんなつもりはなかったのですが、結果的に全て「筆者の方の批判の批判」となってしまい申し訳ありません。

元のファイナンシャルプランナーか、筆者の方のファイナンシャルプランナーか、はたまた当サイトか、どの意見がしっくり来るかは読者の方々の自由な判断にお任せしますが、本題である「ファイナンシャルプランナーのアドバイス」とは、基本的にこうなる、と言うことですね。

・固定金利を勧めてくるのがセオリー

何だか長々と書いてしまった割りには結論はシンプルでした。失礼しました・・・。

そしてもちろん何が言われるか分かっているのに相談しても、金と時間のロス、ということになります。だとすれば少なくとも金利タイプ選びについては自分で決めるしかなさそうですね。

一方、金利タイプが決まれば、どの銀行の住宅ローンを選ぶかについては実践的な知識があるかもしれません。金利タイプ選びは重要ですが、それと同じくらい銀行選びも重要ですからね。割高な銀行から借りてしまっては元も子もありません。

そのように相談したいことを特定した上でファイナンシャルプランナーの知恵を活用するなら、料金分のリターンを得られる可能性があります。参考になさってください。