2017-2018 冬の総まとめ 大雪問題で顕在化した「空気の課題」傾向と対策 エアコン暖房による「乾燥リスク」
<@Press プレスリリースより引用>
https://www.atpress.ne.jp/news/151705
ダイキン工業株式会社では、2017年「空気で答えを出すプロジェクト」をスタートさせ、その一環として、夏の時期には屋内で起きる熱中症の問題や、暑い夜により快適な環境で良質な睡眠をとるためのエアコン活用法を提案するなど「空気の課題」を解決するさまざまな取り組みを行ってまいりました。
「空気の課題」は夏だけではありません。特に今年の冬は「寒波」が続き東京都心でも20センチを超える積雪を記録するなど大雪が問題になりました。そこで2017-2018 冬の総まとめとして、この冬の傾向とエアコン暖房による「乾燥リスク」への対策をご紹介します。
【2017-2018 冬の総まとめ サマリー】
<(1) 2017-2018 全国的な大雪 積雪によるエアコントラブルが各地で発生>
・課題
全国的に雪の多い寒い冬となり、東京でも20センチを超える積雪を記録しました。雪の影響で、エアコン暖房が効かないという問い合わせも多く、ホームページで公開している「大雪に関する困りごとと解決方法」は閲覧者が急増、電話での問い合わせも通常の2倍に上りました。
・対策
エアコンの室外機は、暖房運転時には熱を含んだ外気を吸い込み、冷たい空気を出しています。吸い込み口がふさがってしまうと空気を効率的に吸い込むことができず電気代が高くなるばかりか、暖房運転が停止してしまうこともあります。大雪の日でも安心してエアコン暖房を使うために、室外機の周りが物でふさがれていないかあらかじめチェックしておきましょう。また雪が積もった時は吹き出し口、吸い込み口の周りの雪を取り除き、空気の通り道を確保することを心掛けましょう。
<(2) エアコン暖房による「乾燥リスク」>
・課題
健康で快適に過ごすためのエアコン暖房ですが、長時間使用すると部屋の湿度が低下し「乾燥」を引き起こします。
・対策
エアコン暖房で避けられないこの「乾燥」の問題に対策できるのが、ダイキン独自の「無給水加湿」技術です。暖房しながら加湿ができるこの技術によって、「乾燥」対策しながら快適なエアコン暖房が可能です。
【2017-2018 冬の総まとめ】
<2017-2018 全国的な大雪 雪によるエアコントラブルが各地で発生>
今冬は全国的に雪の多い冬となり、東京都心でも20センチを超える積雪を記録しました。ダイキンには、雪の影響に伴う問い合わせが多く「空気の困りごとラボ」内の「大雪の困りごとと解決法」は、サーバーがパンクしかけるほど閲覧者が急増し電話での問い合わせも通常の2倍に上りました。
大雪が降った時によく起きるエアコンの症状としては、「暖房運転に設定しているのに、エアコンから暖かい風が出てこない」「運転中に止まってしまい、しばらくするとまた運転を開始する」「エアコンの室外機から異音がする」「室外機から湯気が出ている」といったことがあげられます。ここでは大雪の際にエアコンが使えなくなることがないように、大雪が降る前に事前にしておくことと、積雪時における2つの解決策を紹介します。
大事なことは室外機の周辺をキレイにして、空気の通り道を確保することです。
ダイキン「空気の困りごとラボ」では「大雪の困りごとと解決法」以外にも、春夏秋冬、それぞれの季節における空気に関する困りごとについて解説し、解決方法を詳しく紹介しています。この機会に是非ご覧下さい。
<ダイキンからの解説 大雪とエアコンの不調について>
・大雪とエアコンの不調の関係について
大雪が降ったときのエアコンの不調には、エアコンの室外機内部の熱交換器に霜が付くことが関係しています。暖房運転時、室外機は屋外に冷たい空気を吹き出しています。その際、室外機内部の熱交換器は非常に冷たくなっているため、空気中の水蒸気が熱交換器に結露して凍り「霜」となります。また、溶けた雪が凍り付着することもあります。熱交換器に霜が付着してしまうと、室外機の空気の吸い込みが妨げられ、屋外の熱を効率的に取り込むことができなくなってしまうのです。そのためエアコンには、熱交換器に付いた霜を溶かす霜取り運転の機能が付いています。
・霜取り運転について
霜取り運転は、一時的に、通常の暖房運転とは反対に室外機の熱交換器を暖めることで霜を溶かします。一般的に霜取り運転時は、エアコンから暖かい風が出てこないため、故障したと勘違いしてしまいがちですが、霜取り運転を開始してからしばらくすると霜が溶けてなくなり、通常の暖房運転が再開しますのでご安心ください。また霜取り運転で霜を溶かす際、周囲との温度差により湯気が発生することや、室内機から「プシュー」「シャー」という冷媒の音が聞こえることもありますが故障ではありません。
雪によるエアコントラブルは、室外機周辺に空気の通り道を確保して防ぐ!
【2017-2018 冬の総まとめ】
<冬場の温度差(室内の低温)による「健康リスク」>
今冬のように、大雪でエアコンが使えなくなるトラブルは、単に寒いというだけでなく、私たちの健康にとっても重大なリスクにつながる恐れがあります。この問題に詳しい近畿大学 建築学部学部長の岩前篤教授は次のように語っています。
<冬のヒートショックと室内の低温による「健康リスク」に詳しい 近畿大学 岩前篤教授に聞く>
ー冬のヒートショックや室内の低温による「健康リスク」の関係について教えてください。
ヒートショックとは急激な温度差や低温状態によって体に起こる悪影響のことです。動脈硬化が進みやすい持病がある人が、温度差によって急激な血圧の変化にさらされて、心筋梗塞や脳梗塞、不整脈などを起こすことで発症します。このヒートショックが原因で入浴中に亡くなる人は交通事故死者数よりも多くなっています。しかし、実はヒートショックと呼ばれる循環器系、血管系の病気以外にも呼吸器系、内分泌・代謝など様々な疾患が原因で冬の時期に亡くなる人は多く、ヒートショックだけでなく冬の室内の低温が健康リスクになるのだということを私たち日本人はもっと強く認識する必要があります。
ー日本人と欧米人では室内の低温による「健康リスク」に対する考え方が異なるのでしょうか?
欧米人は「寒さは人を弱くする」と考えます。そのためアメリカでは室温を法律で規定している州があったり、イギリスではHHSRS(Housing Health & Safety Rating System)を施行し、室温が低いことで健康に害を及ぼすことのないよう、部屋の温度を高くして暮らしてくださいというメッセージを国として発信しています。暖房によるエネルギーは増えても、健康で医療費が減れば国にとっても生活者にとっても幸せという考え方といえるでしょう。
一方、日本人は「寒さは人を強くする」と考え、寒さを我慢する傾向があります。私の研究室で札幌から大阪の冬の寝室温度を調査したところ、10℃前後が多く、就寝時には多くの人が暖房を切っていることが分かりました。電気代を気にしているのかもしれませんが、深夜に起きたときの危険やヒートショックが原因で発生するかもしれない医療費を考えれば、就寝中に暖房を使うことはそれほど高いコストではありません。節約は大事ですが、命をかけてまで寒さを我慢する必要はありません。欧米のように暖房を「つけっぱなし」にするという考え方もこれからは必要といえるでしょう。
岩前 篤 教授│近畿大学 建築学部学部長 建築環境システム研究室
昭和60年神戸大学大学院工学研究科を修了。大手ハウスメーカーに入社し、住宅の断熱・気密・防露に関する研究に携わる。平成7年、神戸大学にて博士号を授与。平成15年春に同社を退社したのち、近畿大学理工学部建築学科に助教授として就任。平成21年に同教授、平成23年に新設された建築学部の学部長に就任。
ダイキンでは冬場のエアコン暖房の効率的な使い方を検証することを目的に、「つけっぱなし」にした場合と「こまめに入り切り」した場合とで消費電力量の比較実験を行いました。結果は以下の通りです。
●検証実験「つけっぱなし」VS「こまめに入り切り」の結果
(1) 30分程度の外出であれば「こまめに入り切り」するよりも「つけっぱなし」にした方がお得。
(2) 1日で見ると「つけっぱなし」は「こまめに入り切り」よりも消費電力は多いものの、電気代差は30円程度。
~【参考資料(1)】冬場のエアコンの効率的な使い方 検証実験概要・結果~
エアコン暖房を「つけっぱなし」にするのと「こまめに入り切り」するのでは、どちらの電気代が安くなるの?
実験(1):「つけっぱなし」の方が消費電力量が小さくなる時間帯を探る!
概要 :24時間「つけっぱなし」にしたエアコンと、30分間隔でON/OFFを
繰り返したエアコンの消費電力量を比較し、
「つけっぱなし」の方が安くなる時間帯を調べました。
結果 :全ての時間帯で、30分間隔で「こまめに入り切り」するよりも
「つけっぱなし」にした方が消費電力量は小さく、
電気代が安くなりました。
実験(2):「つけっぱなし」にした場合と、1日の想定生活スケジュール*1に
合わせて「こまめに入り切り」した場合の消費電力量を比較する!
概要 :1日の生活スケジュールを想定して、外出時/在宅時に関わらず
24時間「つけっぱなし」にしたエアコンと、外出時に運転を
OFFにしたエアコンの消費電力量を比較しました。
結果 :2時間の外出(外食)をした夜間(18:00~23:00)は、
「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」した方が
消費電力量は小さく、電気代が安くなりました。
1日(24時間)で比較しても、「つけっぱなし」よりも
「こまめに入り切り」の方が消費電力量は小さくなりましたが、
電気代の差は約30円程度でした。
*1 P6【参考資料(2)】冬場のエアコンの効率的な使い方 検証実験の環境・条件 実験(2)1日の想定スケジュール参照
■ダイキンからのアドバイス
電気代は、環境によって大きく左右されるため、どんな時でも当てはまるわけではありませんが、今回の実験と条件が近い場合、30分程度の外出であれば、運転をOFFにするよりも「つけっぱなし」にした方がお得になる可能性があります。一方、1日の生活スケジュールを想定した実験では、2時間の外出をした夜間は「つけっぱなし」にするよりも、運転をOFFにした場合の方が消費電力量が小さいという結果になり、単純に「つけっぱなし」にしておけば電気代が安くなるというわけではありませんでした。1日(24時間)で比較してみても、「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さかったものの、電気代の差は約30円程度でした。「こまめに入り切り」する場合と大きく変わらない電気代で、「つけっぱなし」にして室内の温かさを維持しながら快適に過ごす方法もありそうです。実験結果を参考に、求める快適性と運転効率を考えながら、エアコン暖房の「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」を上手に使い分けましょう。
~【参考資料(2)】冬場のエアコンの効率的な使い方 検証実験の環境・条件~
実験場所 : 京都府京都市
建物構造 : SRC造 13階建て
築年月 : 平成14年8月竣工 築15年6ヶ月
部屋の広さ : 14.1帖 (4階と6階の階違いの同じ間取りの部屋を使用)
使用したエアコン : 「うるさら7 RXシリーズ」 S40VTRXS‐W 4.0kW(主に14畳用)
エアコン設定 : 暖房24℃、風量自動
実験(1)日時・天気: 2018年1月12日 23:00~1月13日 23:00
天気:晴、最高気温6.8℃
※天気、最高気温はともに1月13日のもの
実験(2)日時・天気: 2017年12月25日 23:00~12月26日 23:00
天気:晴、最高気温7.8℃
※天気、最高気温はともに12月26日のもの
【2017-2018 冬の総まとめ】
(2) エアコン暖房による「乾燥リスク」
近年は冬のメイン暖房としてエアコンが定着しています。エアコンがかつての補助暖房からメイン暖房として定着した理由としては、エアコンそのものの暖房性能、省エネ性能が向上したことが大きく、消費電力量は10年間で約17%も減少しています。さらに強力なファンで空間全体をムラなく暖める「快適性」、手に届く場所にないため子どもや高齢者、ペットのいる家庭でも安心して使える「安全性」などもあり普及が進みました。
一方で、長らく解決が待たれていたのがエアコン暖房による「乾燥リスク」の問題です。一般的に加湿機能のないエアコンで部屋を暖めると、空気中の水分量は変わらずに温度だけが上昇するため、湿度(相対湿度)が低下し「乾燥」を引き起こします。「乾燥」は、のどの乾き、鼻のムズムズ、眼の乾燥、肌の乾燥などにもつながるため快適性を大きく損ないます。もし、「つけっぱなし」にしても「こまめに入り切り」するのと消費電力量に大差ないことが分かっていても「乾燥」が解決できない限り、エアコン暖房を「つけっぱなし」にする使い方を取り入れることは難しいでしょう。
このエアコン暖房による「乾燥リスク」を、暖房をしながら解決してくれるのが、ダイキンのエアコン「うるさら7」に搭載されている「無給水加湿」技術です。「無給水加湿」技術は、エアコン室外機が空気中にある水分子を集め、きれいな水だけを室内に送るため、重い給水タンクを運んだり、うっかり水をこぼしてしまったり、そんな苦労はありません。温度を調整するのと同じようにボタンひとつで湿度をコントロールすることができます。
「無給水加湿」技術を搭載した世界で初めてのエアコン「うるるとさらら」(家庭用エアコンにおいて。1999年10月発売)は高く評価され、シリーズ累計販売台数は253万4,786台*2(2017年11月時点)に達し、初代モデルで450ml/hだった加湿性能は、最新モデル「うるさら7(RXシリーズ)」4kW~6.3kWクラスでは800ml/h(1.37kWh)にまで進化を遂げています。ダイキンはエアコン暖房による空気の「乾燥リスク」対策にこれからも取り組んでまいります。
*2 「うるるとさらら」(2000年10月~2012年10月)と「うるさら7」(2012年11月~2017年11月)の合計
エアコン暖房による「乾燥リスク」は、ダイキンの「無給水加湿」技術で解決!
~【参考資料(3)】ダイキン独自の「無給水加湿」の仕組み~
<「Mr.うるさら」に聞く「無給水加湿」開発秘話>
ー世界初の「無給水加湿」への取り組みはどのような経緯で始まったのでしょうか?
他社様との差別化ということもありましたが、実は空調業界として、空調の4要素(冷房、暖房、除湿、加湿)のうち「加湿」だけが実現できていませんでした。お客様からもエアコン暖房の「乾燥」に対する不満の声は多くありました。技術屋としては難しい問題があれば解決したい、攻略したいと考えてしまいます。ただしダイキンが取り組むからには、単に加湿機能をプラスするだけではなく「加湿」を通じてどんな価値を提案するのかが問われます。そこで加湿器の課題だった給水の面倒がない世界初の「無給水加湿」に挑戦することを決めました。
ー「無給水加湿」の開発はスムーズに進みましたか?
問題は加湿水分をどうやって室内に運ぶかでした。「水」の状態で運ぶと雑菌が繁殖する。水蒸気で運んでも冷えるとホース内で結露して「水」になる。そこで考え出したのが加湿運転と乾燥運転を交互に行う「ホース内乾燥運転」でした。一定時間加湿運転をしたら加湿ローターの回転を止めて水分を含まない乾燥空気をホースに流すことで結露を防ぎます。ただ、結露する条件は外気温との関係で変わるため、条件を少しずつ変えながら、それぞれの場合でベストな運転時間をひとつずつ割り出していったのですが、かなり大変でしたね(笑)。現在は制御を進化させて、加湿の連続運転を可能としています。
ー「無給水加湿」を搭載したエアコンが今もダイキンだけなのはなぜですか?
ダイキン独自の無給水加湿技術は、デシカント素材の組み込み、エアコンと加湿空気搬送の連動、安全性の担保など、システムを最適にコントロールする技術・ノウハウがつまっています。エアコン暖房による「乾燥」対策はお客様のニーズも高いので、今後、他社様からも出てこないとは言い切れませんが、無給水加湿機能は簡単に搭載できるものではありません。ダイキンだから出来たと自信を持って言うことができます。
ダイキン工業株式会社 空調生産本部 小型RAグループリーダー
「Mr.うるさら」こと 岡本 高宏 主任技師